パンゲー考察

シャイニング・ハーツ発売記念。


シャイニング・ハーツ発表以来、「パンを作れるゲーム」という点に心惹かれるものがあり、もやもやと、パンの在り方について考えていたので、まとめ。
一般的に言えば、ゲームにおける料理・食事の表現、という話になる。


最近のツイートで散発的に触れていたのでピックアップしつつ。

1週間前くらいのツイート

http://twilog.org/doitaka/date-101127

カツサンドのパンは、最外層の衣…と見るべき。パン作りの創造的なるかな。料理ゲー…うーん。生き死により料理は複雑ていうか
posted at 12:36:05

味覚は他の感覚に比べてパーソナルなのだな。口内に入った時点で、食品はもうその人の一部に。比べて見れば視覚は実にコミュニケーション的。味覚によるコミュニケーション…ああ、唾液の交換ね…ラブプラス+キスコントローラーね…中古買い取り拒否ね…
posted at 13:07:19

味覚再現、共感覚的アプローチなら聴覚主体が現実的か。あと、手、口による解体へのリアクション。歯による断面の生成…ちぎれたパンモデル生成…レタスの鮮度に応じて音が変わる…ぐぬぬ
posted at 13:25:23

このツイートの時点では、味覚をどう扱うか、的な発想で考えていた。共感覚的アプローチとか言ってるし。
で、このツイートの後にふと思いついたものの文章化していなかったことが以下。


直接的な感覚でなくても味覚が表現できればよい、という方向で考えた場合、自分の感覚でなくても「他人がおいしそうに食べている姿、仕草」を見ることで、おいしさの表現はできるはず。
と、考えて思い至ったのだが、自分が料理人の場合、料理を食べるのは他人である。他人の味覚は料理人には分からない。よって、プレイヤー=料理人とした場合には、必要なのは味覚の再現ではなく、料理を食べた人による、料理への評価の表現ではないか。


まあ、「ゲームとはプレイヤーを褒めるシステムである」みたいな話である。自分で食べておいしいということより、人がそれを食べてくれて「おいしい」と言ってくれた方が嬉しい、的な。
そもそも味覚に個人差あるし。


この辺で、「『おいしい』と言ってもらえるゲーム」のイメージが何となくできる。


こないだのツイート

その、もやもやしてたイメージを↓のような発言に出してみた。


http://twilog.org/doitaka/date-101206

パンを焼くときはココロを消費してミニゲームとか…普通に良仕様な気がしてきた…買うか RT @miyayou: 今度の「シャイニング・ハーツ」では200種類以上のパンが焼けるみたいです。 http://bit.ly/fx3kNZposted at 23:26:58

次世代感のあるパン作りゲーム…Farming Simulator とか… http://bit.ly/9sSnEY 面倒な話に入りかけているような…
posted at 23:37:46

パンが関連する種々雑多の事象の中でどこに着目するか、という話か。生産の全過程か、パン屋内での製造過程か、販売部分か、店舗経営か、パンによって起きる人間ドラマか、パンが持つ特殊効果か、云々…。
posted at 23:48:47

Heavy Rain みたいなイメージだけど、パン屋=プレイヤーを狂言回しにして、パン屋の常連客5人に起きるドラマが、作った/売ったパンによって動的に変化する、みたいなアドベンチャーゲームにしたら、次世代感が出るのではなかろか。食中毒でゲームオーバーですよ。
posted at 23:54:13

改めて見ると、物語動的生成の文脈で言ってるようにも見えるけど、優先されるコンセプトは「『おいしい』と言ってもらえるゲーム」の方のつもりだった。というか、物語動的生成はあくまで手段の次元。


「おいしさ」の表現を、直接的〜間接的のレベル分けで考えると以下にマップできると思われる。


↑直接的
 ・自分の味覚
 ・自分の味覚以外の感覚(触覚、聴覚、視覚、嗅覚)
 ・他人の仕草、身体的変化
 ・他人の言葉
 ・伝聞、噂話、過去の出来事(=物語)
↓間接的


1個目だけは現行の装置では無理だが、下の4つは普通に使える。グルメ番組でもやってる。
5番目を「物語」と呼んだ。「現状認識されている概念的な一連の事実」という感じ。「この店は創業〜年、この道一筋で、三星を獲得した〜」みたいな話である。また、個人を対象にする場合は「甘いものに目がなく、特にチョコレートにはうるさい」とか「家が貧乏で月に1回しかハンバーグを食べられず、今日という日を楽しみにしていた」とかすることで、いかにその人がその味を渇望しているか、という事態の表現の強度を上げることができる。


そんなわけで、ゲーム内の「パンを食べる」というキーイベントにおいて、「いかに、そのキャラがその味を渇望していて、今それを食べて感動しているか」をプレイヤーに感じさせるために、色々なシステムが使えるといいなぁ、という感じである。
事前の因縁を構築するための物語動的生成とか、キャラクター外見・仕草のコントロールとか、食べる時の音とか料理の形・動き・変化とか。
後は、味(=成果物)に十分なバリエーションを与えるための、料理行為の多様性確保に対応したUI・データ設計とか。料理をしている、ということに納得感を与えるようなUIとか、プレイヤーの行為の正当な評価につながる味評価システムとか。


チョコレート工場の秘密』で最初の方に食べるチョコレートとか、『千と千尋の神隠し』で千が食べてポロポロ泣くあのおにぎりとか、あんなイメージ。
「自分が作った料理を食べてお客さんが泣く」とかいう体験はなかなか魅力的ではあるまいか。