ヱヴァQ 感想(ネタバレあり)

ネタバレ見ないで初見した直後の感想をつらつらと。
以下続く。
















総評みたいなの

基本的には、エヴァというシリーズの今までの色々に対して誠実に向き合った作品で、かつエンタメ的にも相当のレベルでまとめている、よくできた作品だと思う。
ただ、ボンヤリとでも旧作のイメージとか文脈を前提にして見ないと、わけわからんけどまあ派手でよく絵が動くアニメ、で終わるのかもしれない。……というか、確実にそうなるのかも。絵とか、テンポとか、構成とかは、飽きさせない仕上がりだとは思うのだけど。


これまでのエヴァ/ヱヴァについて

Qがこれまでのエヴァ/ヱヴァに向き合う作品、と言うからには、じゃあ、これまでのエヴァ/ヱヴァってどうだったの、ということになるので、自分なりに簡単に整理してみる。
基本、TV版〜旧劇までについて。


・ 少年的自意識の問題をコアにして、オカルトチックなロボットアニメのガワを表層に据えて語りを展開した作品。
・ 碇家の、子(シンジ)、父(ゲンドウ)、母(ユイ=綾波)の関係が主軸になる、閉じた関係内の話。
・ エヴァンゲリオンは、自意識を顕在化・拡大し、世界と接続する装置として働く。
  これは、子にとっても父にとっても同様。この意味で、子と父は対立しつつも同質。
・ 不在なのは母であり、父と子は作中に並立する。強度的には母が強い。母 対 子=父 の関係構造。
・ アスカは、碇家の三角形からは他者である。
  助けるべき対象としての他者であり、助けられる対象としての自己の鏡像でもあり得る。
  閉じた家族構造からの突破口になり得る。


自分なりの理解はこんな感じ。
で、旧シリーズは、旧劇で割とちゃんと完結してると思ってる。
装置としてのエヴァンゲリオンを通して、自意識の可能性を極大まで広げた結果、自意識で世界の全てを規定し得る可能性の世界を垣間見て、そこから再度現実に降りていく、というような流れ。で、最後にシンジとアスカで向き合って、肉体の感触を得て〜、みたいな感じで落としていいんじゃねーかと。


すごく平たく言えば、「私はここにいる」系のオチだと思うが、それをどう語るか、が作品の在り方なわけなので、オチを類型的に見た時にどうこうはおいておいて、視聴者のハートをがっちり掴んでぶん回すパワーにひれ伏すところ。


今回のヱヴァQ

話の構成は、3つに大きく分けられると思うが、それぞれこんな感じかと。

�目覚め〜疎外

アスカ他によってシンジが奪還。(眠り=死、からの、覚醒=再生)
過去のエヴァ/ヱヴァの世界からの異邦人としてのシンジの提示。
過去の呪縛から逃れ、これと対峙・超克しようとするミサト、アスカらの提示。
エヴァでない力によって使徒=外敵を撃退する姿を提示)
→ 超克者と成り得ない、過去の呪縛に捕らわれたままの存在として疎外されるシンジ像 = 視聴者。


※ 14年という具体的な歳月の提示。「エヴァの呪い」と明言。
  シンジを「ガキ」と呼ぶアスカもまた子供のままである。

�過去への回帰

過去=綾波への呼びかけ。
呼応する綾波の手により、シンジは再度、地下=自己の深い部分へと潜る。
14年の歳月を経た、ゲンドウ=シンジの自意識の世界の残滓 = NERV。
過去の試み(エヴァ初号機による)が、失敗して? 途中で止まったまま、失われた世界として描く。
記憶のない綾波=失われた、再度獲得すべき対象としての母。
シンジが自分の罪を思い出す過程。

�過去の再演

新劇に出ていなかったカヲルの登場。
カヲルを導き手として、シンジによって失われた世界が、これから再生させられるべき世界として提示される。
壊れたDATの修復→再生、再開。


旧シリーズの再演。
エヴァ(自意識拡大装置)による超自然的な世界再生の試み → 失敗。
他者たるアスカとの対峙。


結果、
エヴァを降りて、崩壊後の赤い世界を自らの足で歩く。
DATを手放す。
→ 次回に続く。


以上

というところかと。
要するに、今作で、新劇が旧劇を総括しつつ追いついてちょっとだけ追い越したので、次がエヴァ/ヱヴァの総締めくくりになるんじゃないか、と期待させられる。


まとめ

旧シリーズで自らが作った、作品内外の文脈に、どーんと真正面から乗っかって、それらを丸ごと飲み込もうとしている、という姿勢は、あまりにも作家的であり、メジャー級の? 娯楽作品のカテゴリでそれができるというのは、ただただすごいことだと感心する。
旧シリーズ、あれはあれでまとまっていたとは思うのだが。諸々の縁によって、その結末をもう一度やり直して引き継ぐ機会が得られるというのは、作品として幸せなことではないか。一歩間違えば転落しかねない恐ろしさはあるが。


そういう作品が社会現象レベルの扱いで世に出ている現場に居合わせるというのは、なかなか感慨深いものが。


ついでに、巨神兵東京に〜 について

ヱヴァQ本編の前に、わざわざこれを持ってくるところには何らかの意図を汲み取らざるを得ないところ…。


語り手の少女? の視線が導く形で、東京=世界の破滅を具現化する作品。
まあ、普通に、ヱヴァQの方の、世界の破滅とイメージが重なる。
「世界の破滅はいとも簡単に語られてしまう」という形で、ヱヴァにおける破滅と、巨神兵〜における破滅を並置・相対化している、といったところだろうか。