戦国コレクション15話 最上義光回の絵解き

見た。


最上義光スク水少女になってて、古い洋館に友達と肝試しに〜、っていうウォーなあらすじではあるのだが、もう一つの軸として、最上義光伊達政宗の、伯母・姪の関係が含まれている。この伯母・姪の関係が、さらに現代世界で生きることと戦国世界で生きることとの選択の問題にも発展しているのだが、これらの多層の要素をコンパクトに過不足なくまとめていて脚本の精度が高い。
ということで、整理も兼ねてちょっと書いてみる。

洋館探検というモチーフ

雑に言ってしまえば、館=人物の内面、という見立てをした場合、館の中を探検することは、その人物の内面を探る行為という見立てになる。
その館が主人公の内面の象徴である、と見れば、主人公が館を探検するのは、自身の内面の探求、あるいは、自己との対話にほかならない。
本作の義光はまさにその立場となる。


少々紋切り型な対応付けではあるが、件の洋館が少女たちの一人・マオの伯母の持ち物であるという設定は、これを補強する材料と言える。
つまり、マオ・マオの伯母の親戚関係を、政宗・義光の関係と重ねあわせれば、「伯母のもの」であるこの洋館は、義光と対応付けできる、と。


これを起点に見れば、作中の出来事は以下のように対応付けできる。
 ・ 義光が洋館を恐れること → 自己の内面に向きあう事への恐れ
 ・ 村田さん → 自己の内面を明らかにしようとする外的な不思議な存在
 ・ 開かずの部屋 → 無意識に目を背けている何か

政宗との対面

その後、なんやかんやあって、結局義光は開かずの部屋に入ることを決意する。
マオたち現代世界の友人を失いたくない、という心情が、無意識に避けていた不都合な何かへの対峙を決意させたという形。


で、結局、開かずの間にいたのは政宗だった。
義光は政宗を助けることを提案するも、「こちらの世界に残るなら自分と関わるべきでない」と固辞される。
そして、「我々はここで会わなかった」と出会った事実をなかったことにしようとする。


現代世界で、一人の女子学生として生きる義光にとって、向き合いたくない不都合な何か、が政宗である、ということには様々な意味を見出せる。
これは、アバンの義光のモノローグでの、「私はこっちの世界が好き」「家督争いでいがみ合っていた戦国世界とは違って現代世界の方が私にはしっくりくる」「このままずっと平和な世界で生きていきたい」という発言からも明らかである。
つまり、政宗は、戦国世界そのもの、家督争いが絡んだ良好でない親族関係、をも象徴する存在、となる。
現代世界で生きる今の義光にとっての心残り・わだかまりは、政宗の存在で、洋館探検という象徴的手順を経て、これに向き合うこととなった。


義光にとっての最善の結末は何であったか、政宗=戦国世界との関わりを断つこと、館から政宗を追い出すこと。そして、その最善の結末を、他ならぬ政宗自身が提示してきた。
政宗は二度と義光の前に現れることはない。家督争いに悩むこともなくなった。明日から現代の少女として、今まで通り生きていける。
だが、義光は政宗との別れを悲しみ、涙する。
望みどおりの結末は迎えられた、だが悲しい。そういうことである。


政宗が館を去る時、義光は館の屋上に昇り、花火を打ち上げる。
これは「我々はここで会わなかった」という政宗の発言に対する、義光なりの反抗であろう。
確かにここで我々は会った、という証としての花火。忘れないという意思表示。
その音と光は、第三者のユミの耳にも届いた、と。

政宗とマオ

本話でキーパーソンになるのは、少女たちの一人、マオである。
政宗・義光の関係と対比させられる、洋館の持ち主の姪という立場。
言わば、義光にとっての、現代世界での政宗=姪、ということになる。


義光にとっての、戦国世界と現代世界の選択は、政宗とマオの選択という形に象徴化される。
義光が開かずの部屋に入るシーンの直前では、マオが部屋から姿を消している。
象徴的な理屈に従えば、開かずの部屋にいるのは、政宗・マオの二重存在的な何かであり、義光は開かずの部屋での選択によって、その二重存在を、政宗、または、マオのどちらかに固定させなければならなかった。
そして、結果としては政宗は消え、マオが残った。


政宗と別れた義光は、マオに「礼拝堂で会った猫」について話す。
戦国世界の叔母と姪の物語は、現代世界の姪に継承され、現代世界の伯母と姪として和解に至る、そんなラストである。


まとめ

と、こんな感じになっていると思われる。
ぱっと見は、ロリー!キマシー!という感じだが、筋はシンプルながらきっちり通っている。

戦国武将美少女化もの、という謎ジャンルだが、きっちり職人の仕事が入っている。まじめにふまじめ、だなぁ。


途中、村田さんが霊視をして「一人じゃなかった」と叫びながら走り去るシーンがあったが、これはよく分からない。政宗・マオの二重性に関係する? とも思ったが、さすがにそれは合わない気も。


まとめ:義光ちゃんprpr